就職・独立に強い司法書士は不動産登記の独占業務を行う難関資格
国家 | 目安勉強時間 | 1日6時間勉強で | 1日3時間勉強で | 難易度 |
3000時間程度 | 約500日 | 3年程度 | S |
難関資格トップ3常連の司法書士は不動産登記の独占業務が職を保障する
司法書士は誰でも受験できる資格で、独立開業している人の多い仕事になります。
司法書士のメインの仕事は登記に関わる業務です。
不動産や各種権利は、登記というシステムを用いて法律により保護する必要があります。例えば、家の場合であれば、これを行うことで自分の家が確かに自分のものであることが保障されることになります。
司法書士が行う登記の業務には、主に企業に対して行う会社設立のための登記の業務と、不動産に関わる権利を扱う登記の業務の2種類があります。
これらは、司法書士が専門としている業務のため、多くの司法書士事務所が登記案件を扱う業務を行っています。(弁護士も登録をすれば司法書士として業務が行えますが、弁護士は係争案件を扱うことがほとんどですので、登記はほとんど司法書士の専門と言えます)
不動産に関わる登記案件は主力業務の1つになる
不動産に関する司法書士が代行できる登記申請は権利の部分です。これは、住宅ローンを組む際や、ローンを払い終えた際に、抵当権などの権利設定を行う、解除するといった登記申請の部分になります。
ただ、不動産に関する登記は他にも種類があり、家を建てた時には、家がどんな形で、どのように建てられているのかの登記を行う必要があります。
この場合には、家の調査を行い、登記のための書面を作ることができるのが土地家屋調査士となります。そのため、不動産の登記を専門とする司法書士の中には、提携する土地家屋調査士がいる場合や、土地家屋調査士の資格も取得する人がいます。
司法書士の資格を取得している人が、合わせて土地家屋調査士の資格を取得することで、不動産に関わる全ての登記の作業を一括で行えるようになります。(土地家屋調査士についてはこちら)
会社の登記に関わる仕事も司法書士の主な仕事の1つ
会社の登記も司法書士の大きな仕事の1つですが、会社の定款などを作成して登記を行う場合には、業務の中に行政書士の資格が必要となる場合があります。起業する場合には、職種によっては役所への届け出がなくては開業できない場合があり、こうした行政に提出する書類の代行の場合は行政書士の資格が必要となります。
そのため、司法書士の資格と合わせて行政書士を取得することで、両方の業務を行えるようになります。ただ、司法書士と行政書士どちらも採用している法務系事務所も多いので、その場合には司法書士だけで就職することができます。
また、司法書士が扱う業務に、相続案件の取り扱いがあります。不動産が含まれる場合には司法書士が行うことができますが、不動産のない相続の場合には司法書士は業務ができないため、これも行政書士の資格があれば両方行えることになります。
弁護士との業務の境目がある事項には注意が必要な資格
司法書士の仕事には、少額訴訟の案件があります。
この範囲内で、過払い金支払いなどの係争案件を取り扱う司法書士もいますが、係争案件の額が大きくなると弁護士しか取り扱えないという壁が出てきます。
線引きが難しい部分があるため、係争案件を扱う場合には、業務の取り扱いに十分注意が必要となるのが司法書士です。
何を専門とするかによって、司法書士としてのキャリアの方向性が異なってきます。自分が何に興味があるのかを考えながら、合わせて取りたい資格についても頭に入れて置くと良いと思います。
行政書士の資格は、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士の資格を取得して登録している場合については、試験を受けることなく行政書士としての登録も可能です。
司法書士の受験資格と日程と費用のまとめ
誰でも受験できます。
試験科目
【午前の部】科目:憲法、民法、商法(会社法・その他の商法分野に関する法令)、刑法
出題形式:マークシートによる多肢択一式
出題数:35問
【午後の部】科目:民事訴訟法、民事保全法、民事執行法、司法書士法、供託法、不動産登記法、商業登記法
出題形式:マークシート方式による多肢択一式および記述式(書式)
出題数:多肢択一式/35問、記述式(書式)/2問
※記述式は不動産登記法1問、商業登記法1問
口述試験
筆記合格者について1人15分程度の面接方式による試験
- 憲法、民法、商法(会社法・その他の商法分野に関する法令)、刑法
- 民事訴訟法、民事保全法、民事執行法、司法書士法、供託法、不動産登記法、商業登記法
- 記述式は午後の部のみで実施され、不動産登記法・商業登記法、各一問
年1回の試験です。
筆記試験日:7月第一日曜日
口述は10月上旬~中旬(筆記試験合格者のみ1人15分程度)
筆記試験時間:午前の部 2時間
午後の部 3時間
受験手数料:8,000円
(収入印紙で納付)
【願書配布】4月上旬から5月中旬
願書は各都道府県の法務局または地方法務局の総務課にて交付
【受付】5月上旬~中旬
願書提出は受験する試験場の所在地を管轄する法務局または地方法務局の総務課に提出もしくは郵送
東京,横浜,さいたま,千葉,静岡,大阪,京都,神戸,名古屋,広島,福岡,那覇,仙台,札幌,高松
筆記試験合格発表:9月下旬~10月上旬
口述試験合格発表:10月下旬~11月上旬
司法書士の試験内容についての詳細
午前の部は、択一式の試験になりますが、民法と商法の難易度が高い傾向があります。
午後の部の試験は不動産登記法と商業登記法について、つまり実務で最も扱う事になる可能性の高い部分について重点的に出題される傾向があります。
口述試験については筆記試験後からの準備で十分に間に合うものとなっていますので、筆記がメインの試験となります。
司法書士に合格するための学校選び
司法書士は、多くの科目に挑戦しなくてはならない、出題範囲の広い試験です。そのため、高率の良い勉強方法を知っているかどうかが合否を分ける部分があります。
司法書士の資格は相対評価試験になるため、合格率はほぼ一定で、上位の点数を取得した人から、基準点以上の範囲で合格者を出します。
午前の部、午後の部ともにギリギリではなく、余裕を持って基準点をクリアする必要があるため、予備校が培っているノウハウが必須になってきます。
通学と通信とどちらの受講方法も選べますが、通学の場合は50万円程度の費用がかかります。
司法書士の予備校としての現在の評判は、LECの司法書士
と法律資格・公務員試験のスクール【伊藤塾】が高くなっています。
初学者に分かりやすいのがLEC、テキストが良く、模試が安いのは伊藤塾です。資格の学校として定評があるTACで司法書士を目指す人もいます。
辰巳法律研究所を選ぶと、合格した際のキャッシュバックが大きく、半額の返戻金がある場合もあるようです。
通信をメインにしている講座を選ぶ場合には、クレアールなどがあります。
初学者向けの講義の予備校比較
学校名 | LEC | 伊藤塾 ![]() | TAC | クレアール ![]() |
特徴 | 通信・通学を選択することができます。通学学習があり、初学者に分かり安いと評判 | テキストの評判が良い学校です。 金額が他に比べて、安く質が良いと評判です。
| TAC予備校は定評のある学校です。
| 自立学習ができる方は通信を検討してみるのも良いと思います。![]() |
金額 | 通学・通信:50万円程度 | 通信・通学:45万円程度 | 通信・通学:50万円程度 | 通信:20~35万 |
資料請求 |
資料を取り寄せたり、おためしの講義を受けてみることで相性の良い学校を選び、1年程度しっかりと勉強ができる環境を作りましょう。
学生などで大学生協が使える場合には、学費が減額されるシステムがある可能性が高いですので、そうした大学のシステムも活用しましょう。
一般教育給付金を利用することで、ハローワークから学習の支援手当を受けられる場合があります。対象の講座に当てはまる場合には、申請を行い学費負担を減らしましょう。
独学で司法書士を目指したい場合
難易度の高さと、試験対象範囲の広さから、独学合格者の数は少ない資格です。
絶対に無理とは言わないものの、長期戦への覚悟が必要です。傾向や対策を自分で発見するのに時間がかかるため、3年程度の期間を要する場合があります。
資格取得目的によっては、独学での挑戦も有りだと思いますが、そのためには上記の予備校が出版している良質なテキストを集める必要があります。
合格率は毎年3%程度で推移している
既に記載してありますが、相対評価の資格になりますので、合格率は3%程度で一定です。
ただし、誰でも受験できるという特性があるため、勉強量は人により差がありますから、合格率は低くなる傾向があります。勉強をしていても受からないという資格ではなく、正しい勉強を正しい方向性ですることが大切な試験となります。
司法書士の資格への求人と年収の目安
司法書士に合格した場合には、全国にある司法書士会のいずれかに登録し、そこで催される研修に参加する必要があります。実施期間やカリキュラムなどは各司法書士会によって異なり、中には配属研修を司法書士会登録の必須条件とするところもあります。
配属研修は、司法書士事務所で1~3ヶ月程度働いて実務を学ぶ研修です。派遣先は就職先と異なる司法書士事務所を選ばなければならないところもあり、派遣先事務所の条件もさまざまです。
研修と平行して、司法書士の単独資格で就職する場合には、法務未経験の場合には350万円程度の年収からスタートすることになるでしょう。
その後、経験とともに年収が上昇し、500万円程度が平均と言われています。
資格の難易度からすると、年収が高くないように感じますが、年収の程度は地方か首都圏かによっても異なってきますし、合わせて持っている資格があるかによっても変わってきます。
法務の経験を積んで企業へ就職する場合には、さらに年収が高くなる場合もありますので、高い人では800万円程度まで年収を上げることができます。
司法書士の資格は、生かし方で年収や働き方が異なってきます。
独立を考えている人の場合には、司法書士単独、司法書士と土地家屋調査士のダブルライセンス、司法書士と行政書士のダブルライセンスで独立する人が多いようです。
この場合は、経営次第で1,000万、2,000万と年収を増やすことができます。
司法書士の仕事は、少額であれば係争案件も扱えることや、業務範囲が広がっている背景もあり、人助けの業務に専念する人もいます。
司法書士の資格で何をするのかで方向が全く変わってきますので、勉強しながら法務関係の事務所で働く選択をするのも、モチベーションのためにも良い選択かと思われます。
補佐を募集している求人は多くありますので、求人サイトを見てみましょう。
ダブルライセンス・トリプルライセンスで就職と独立にさらに強くなる
司法書士はそれだけでも十分に活躍することはできますが、関連業務上、取っておいた方が助かる資格があります。
登記のプロフェッショナルとして全ての業務をこなしたい場合には、土地家屋調査士の資格を合わせて取得する必要があります。
会社の登記の仕事を一手に引き受けたい場合には、行政書士の資格を合わせて取得した方が良いでしょう。
海の法律の専門家と言われる海事代理士の資格も取得することで、船舶の登録や登記の仕事を請け負えるようになります。海事代理士の資格のみで仕事をするのは難しいですが、司法書士の資格と合わせて活用することで、海事代理士としても活躍できるでしょう。
その他には、税理士であれば行政書士として登録もできますので、税理士と司法書士の両方を取得するという方法もあります。ただ、扱える業務があまりに多くなると、専門性が高くならない、法改正の勉強が追いつかなくなるなどのデメリットも考えられますので、1人で資格の全てを生かしきれるかは難しいところです。
社会保険労務士や中小企業診断士などの資格も、企業法務を行う場合には相性の良い資格となります。就職して仕事の広がりが出る中で、資格の方向性を確かめていくことが大切になるでしょう。
司法書士の資格は働き方として選べる範囲が広くなります。独立を念頭に置いて働いている方も多いですが、色々な分野の企業で法務として活躍することもできます。
働く場所や環境を選びやすい資格であり、全国に求人がある資格でもあります。年収については働き方による幅が広くなりますが、法律に興味があり、人を助ける仕事がしたい方には向いている仕事と言えます。