精神保健福祉士は精神障害を抱える人の生活向上を支援する国家資格
国家 | 基本学修年数 | 専門学校 | 大学 | 大学受験難易度 |
2~4年 | 2~4年 | 4年 | 低~高 |
※大学・大学院は、選ぶ大学によって難易度が大きく異なります。
※指定カリキュラムを修了していない場合には、別の養成施設で追加学習が必要です。また、精神保健福祉士のためのカリキュラムのある4年制大学卒業者以外は、実務経験や養成施設(1年~)での学習が必要です。
精神障害のある人のためにソーシャルワーカーとして働く精神保健福祉士
福祉系国家資格として広く知られている資格には、「社会福祉士」「介護福祉士」「精神保健福祉士」、そして上位資格としては「ケアマネジャー」の資格があります。
社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・ケアマネジャーの違い社会福祉士・・・身体的な事情、精神的な事情、環境的な事情のいずれか、または複数が要因となって社会生活が困難になっている人の相談に乗る、適切な行政サービスや医療との連携を図るなどして支援を行う仕事です。
介護福祉士・・・介護施設等において、介護の必要な利用者の方に対して専門的な知識を持つ立場で支援を行う他、介護施設のスタッフの指導等を行う仕事です。
精神保健福祉士・・・精神保健福祉士の支援対象者は精神障害者のみです。精神科等で精神障害を持つ方の支援を行います。
ケアマネジャー(介護支援専門員):該当資格※に基づく業務か、生活相談員・支援相談員・相談支援員・主任相談支援の業務を5年以上かつ900日以上従事した方のみ受験資格が得られる福祉系の上位資格です。介護度の認定調査や、申請の代理、ケアプランの作成などが行えるようになります。
(※)該当資格:医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士(管理栄養士)、精神保健福祉士
介護福祉士は、介護に関する専門家としての相談窓口かつ介護を行う立場にあり、社会福祉士は、より広く社会福祉に関するサービスとそれを必要としている人々を繋げるための支援を仕事ですが、精神保健福祉士は、精神・身体上の障害を抱えている人を専門として生活支援を行う役割を担っています。
精神科ソーシャルワーカーとして働いていた人たちのために誕生した国家資格である精神保健福祉士の資格は、精神的・肉体的なハンディキャップなどによって社会生活・日常生活が困難な人に対し、課題の解決やより良い生活の実現を助ける活動を行います。
個人の問題の解決のために行うカウンセリングとは異なり、ソーシャルワーカーの役割は、社会の中で生きる支援を行うことを目的としており、その対象者は身体または精神上の障害を抱えている人です。
精神疾患を患うと、生活上さまざまな困難を抱えることになります。そのため、精神保健福祉士は、精神障がい者の理解のために正しい知識を身に着ける必要があります。特に、精神の障害の原因を探るために、脳や脳以外の体の機能不全等により起こる精神疾患である身体原因性疾患(アルコール依存症や、アルツハイマー型認知症など)なのか、心理面や環境面が原因である心因性・環境因性疾患(PTSD、いじめなど)なのか、原因不明の内因性疾患(統合失調症や躁うつ病など)なのかといった区別を行った上で必要な支援を提供します。
精神保健福祉士は、障がい者等からの相談に応じて情報を提供し、市町村やサービス事業者との連絡調整等を行う基本相談支援や、施設や病院から地域生活に移るために必要な支援を行う地域相談支援、障害福祉サービスを利用するための支援としてケアプランを作成するなど計画相談支援業務を行います。
精神保健福祉士に求められるもの
精神科でソーシャルワークを行う精神保健福祉士は、相談者である個人の問題だけでなく、個人の取り巻く環境を理解して生活を援助する必要がある他、人権について深く理解した上で精神疾患を抱えている人が自分自身で生活上の決定ができるように相談者の支援をする必要があります。
精神保健福祉士は、相談者の苦しみに直面する場面が多いことから、心理面で負荷がかかります。そのため、相手のことを理解するために共感する力が必要な一方で、プライベートでは辛さを抱え込まないように上手な切り替えが必要な仕事です。あまりにも相手の感情に引きずられやすい場合には、長く続けることが難しくなる可能性もあります。
精神保健福祉士は、名称独占資格のため、無資格者でも精神保健福祉士が行う仕事をすることは可能ですが、医療機関や市区町村などでは有資格者を対象にした求人が多くなっています。
精神科、メンタルクリニック、福祉事務所、児童相談所、社会福祉協議会、社会福祉施設、障害者福祉関連施設、司法関係施設、医療機関などの様々な職場から有資格者の求人がある他、メンタルケアを提供する民間企業においても求人があります。また、児童福祉施設である助産施設や乳児院、保育所、母子生活支援施設、児童厚生施設等においても、ソーシャルワーカーの募集があり、社会福祉士や精神保健福祉士が求められています。
他にも、高齢者福祉関連施設として、特別養護老人ホームや、デイケアセンター、地域包括支援センター等からも精神保健福祉士の求人があります。
精神保健福祉士には、公務員として資格を生かす道もありますが、市や県が運営する精神科の病院や、自治体の福祉課、保護観察所などで働く場合には、精神保健福祉士の資格取得とともに、地方公務員試験に合格する必要があります。
精神保健福祉士は、支援を行う機関や、医師や看護師などの専門職の人々との繋がりが必要な資格であり、基本的には周囲と助け合いながら働く必要がある仕事です。また、支援者の家族や保護者との関係も大切な仕事のため、チームとして働く事や、周囲のケアを考えられる人で、人に対して尽くしたい気持ちがあり、相手の立場で気持ちを考えられる人が求められています。
精神保健福祉士は、精神科やメンタルクリニックが主な就職先であることから、就職先の数に限りがあり、社会福祉士や介護福祉士などの資格と比較した場合には、資格による就職先は狭い傾向があります。ただし、カンセリングやメンタルケアを求める状況が社会に広がっていることもあり、精神科にこだわらずに資格を生かす場合には、就職の幅を広げることができます。
精神保健福祉士の仕事の範囲は、社会福祉士や介護福祉士、臨床心理士や認定心理師と重なる面もあるため、自分がどんな仕事をしたいのか、どういう目的で、どんな場所で働きたいのかをイメージしながら、資格取得を目指しましょう。
精神保健福祉士になるには指定の大学・専門校を卒業し国家試験の合格が必要
画像をクリックするか、こちらをクリックすることで受験資格の詳細ページ(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)を見ることができます。
最も短い期間で、実務経験なく精神保健福祉士の資格が取得できるのは、指定カリキュラムを修了できる4年制の福祉系大学を出て国家試験を受験し合格するルートです。2年制の短大の場合には指定カリキュラムを受講していても、実務経験が2年必要であり、3年制の場合には実務経験が1年必要です。
また、福祉系の大学を出ていても、精神保健福祉士に必要なカリキュラムを終えていない場合には、短期養成施設等(6ヶ月以上)にて追加で学習をしてから精神保健福祉士の国家試験を受ける必要があります。
社会人になってから、または大学や短大の途中で精神保健福祉士を目指そうと決めた場合には、一般養成施設において1年以上勉強して、国家試験を受けるルートもあります。
医療・福祉系の大学・専門学校一覧にて、全国の精神保健福祉士の資格取得が目指せる大学・専門学校の一覧と学校の特徴を確認することができます。
短期養成施設・一般養成施設は通信教育や夜間が多くなります。自分の学習スタイルや生活スタイルに合わせて学校を選びましょう。
働きながら学びたい方、仕事を辞めて学業に専念したい方は、専門実践教育訓練給付金等を利用することで、学費が大幅に安くなる場合があります。対象になる場合には給付金を利用しましょう。
精神保健福祉の国家試験の試験内容の詳細とまとめ
大学・専門学校において指定のカリキュラムを修了しているか、同等以上の技能と知識があると認定された者
総問題数:163問
土曜日:80問(専門科目)
日曜日:83問(社会福祉士と共通)
※精神保健福祉士と社会福祉士は、日曜日の共通科目の問題が同じです。
マークシート方式(五肢択一)、配点は1問1点
出題範囲
1)精神疾患とその治療、 2)精神保健の課題と支援、 3)精神保健福祉相談援助の基盤、 4)精神保健福祉の理論と相談援助の展開、 5)精神保健福祉に関する制度とサービス、精神障害者の生活支援システム、 6)人体の構造と機能及び疾病、 7)心理学理論と心理的支援、 8)社会理論と社会システム、 9)現代社会と福祉、 10)地域福祉の理論と方法、 11)福祉行財政と福祉計画、 12)社会保障、 13)障害者に対する支援と障害者自立支援制度、 14)低所得者に対する支援と生活保護制度、 15)保健医療サービス、 16)権利擁護と成年後見制度
年一回:1月下旬~2月上旬(土曜日・日曜日)
土曜日:専門科目:2時間20分
日曜日:共通科目:2時間15分
合格発表:3月中旬頃ネット上で確認可能
受験手数料:17,610円
精神保健福祉士も同時に受験する場合の受験手数料:28,140円
【申し込み方法】
申込書類を請求→郵送提出
【受付】9月上旬から10月上旬
北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県
試験合格後には、登録免許税(15,000円)が必要です。
精神保健福祉士の合格率は60%程度で推移している
精神保健福祉士の試験科目は17科目あり、そのうち11科目は社会福祉士国家試験の試験科目と共通です。
精神保健福祉士の国家資格の合格率は、60%程度です。専門教育を受けた上での合格率ですので、合格率は決して高いとは言えません。合格率は、総得点の60%以上をおおまかな水準としていますが、毎年基準が異なるため、基準より高めの正答率となるよう準備をしておく必要があります。
国家試験対策を十分に行うには、自分のスタイルに合わせて予備校の使用等も検討してみると良いでしょう。
精神保健福祉士としての業務に5年以上従事した上で、都道府県が実施する研修を修了すると、相談支援専門員になることができます。高齢者の介護を行う上でのケアプランを作成する業務を行うケアマネジャーのように、障がい者の方に対してケアプラン等を作成する業務を行うのが相談支援専門員です。(精神保健福祉士は、ケアマネジャーを目指すこともできますが、こちらは受験が必要な資格です)
精神保健福祉士として就職した場合の年収や待遇
精神保健福祉士として働く場合には、医師、看護師、保健師、臨床心理士、公認心理師、作業療法士などと連携しながら、地域の相談窓口や、精神科病院・メンタルクリニックにおいて精神科ソーシャルワーカー(Psychiatric Social Worker)として働くことができます。他にも、学校、社会復帰施設、保健所、地域活動支援センター、グループホーム、就労支援施設などが主な就職先です。
年収は250万円~500万円程度が多く、就職先の法人や施設、経験年数等によって年収は変化します。医療法人、福祉系の法人、学校法人、自治体に就職する可能性が高いため、福利厚生がしっかりしている就職先が多い傾向にあります。
公務員試験を受けて、社会福祉士の資格を生かして公務員で働く場合には、年収は500万円程度を目指すことができます。
精神保健福祉士の資格取得者は、実務経験5年以上かつ900日以上を経て、ケアマネジャーを目指すことで、月収に数千円~数万円(施設によって異なります)プラスして働くこともできます。仕事の幅を広げる意味でも、ケアマネジャーの資格取得は念頭に入れておくと良いでしょう。
カウンセリング・メンタルケア・福祉系の企業を立ち上げたり、独立する人の場合には、年収は平均より多くなるケースもあります。
精神保健福祉士の受験をする人で、幅広い福祉の仕事に興味がある人や、就職先の幅を広げたいと考えている人は、社会福祉士の資格取得も同時に考えると良いでしょう。共通試験があり、同時受験が可能です。社会福祉士の仕事のニーズは高く、社会的にも有資格者が求められています。精神保健福祉士や社会福祉士に興味がある方は、大学・専門学校・養成校のオープンキャンパス等に参加してみると良いでしょう。
仕事のより詳しい内容についてや、どんな事を行うのかが知りたい人は、関連の本を読んでみる他、実際の仕事の場を見学してみると良いでしょう。