臨床工学技士は総合病院等で医療機器を操作・点検する専門家用資格
国家 | 基本学修年数 | 専門学校 | 大学 | 大学受験難易度 |
3~4年 | 3~4年 | 4年 | 低~高 |
※大学・大学院は、選ぶ大学によって難易度が大きく異なります。
臨床工学技士は人工呼吸器・血液透析装置・人工心肺などの医療機器を扱う専門家
臨床とは、臨(そばに行く)+床(ベッド)を意味していて、患者さんのそばで医療に関係のある行為をすることを指します。臨床〇〇士(師)という場合、〇〇に当てはまる部分の行為が法律によって許可されている人々を意味しています。
臨床検査技師・診療放射線技師・臨床工学技士の業務の違い臨床検査技師・・・尿・血液の検査、心電図、超音波検査を主に行う
診療放射線技師・・・X線や高エネルギー放射線を使用した検査や治療を主に行う
臨床工学技士・・・人工呼吸器、人工心肺装置、血液透析装置の使用・保守・点検等を主に行う
医療の現場において患者さんの命を維持管理するためには人工呼吸器や血液透析装置、人工心肺装置などの機器が使用されますが、こうした機器を医師の指示のもとで操作したり、保守・点検を行う専門家が臨床工学技士です。
近年ますます発展し、複雑化していく機器の操作方法を獲得しながら日々進化する医療の世界について学習を続ける臨床工学技師は、人工心肺や人工呼吸器を取り扱うことから、手術に立ち会う必要もある患者さんに近い立場の仕事です。その一方で、人工心肺や人工呼吸器、血液透析装置といった高度な技術を伴う機器の保守や点検を行うため、工学系の知識である機械に関する知識と、医学の知識の両方について詳しく知る必要があります。
医療現場で扱われる医療機器には、診療放射線技師が扱うX線検査、CT検査、MRI検査や、臨床検査技師が取り扱う心電図検査、超音波検査などの他に、臨床工学技士が扱う生命維持装置である人工心肺や血液透析装置、人工呼吸器などがあります。
医療機器の高度化が進んでいることや、医師が医療行為と同時に機械を操作することが難しいことなどから医療機器を専門に扱う医療スタッフのための国家資格として臨床工学技士がつくられましたが、現在の臨床工学技士が取り扱う範囲の業務は、かつては臨床検査技師が行っていたこともあり、臨床検査技師と臨床工学技士の両方の仕事を持っている人もいます。
臨床工学技士は医師の指示の下で機器を動かしますが、常に指示に従うというよりは、方針に沿って自分自身で業務を行うことになります。人工心肺を扱う場合には、手術中に適切に心肺を動かす必要があり、それ以外にも電子メスや麻酔機器など、他の医療従事者が使用する機械の点検や整備を行うもの臨床工学士の仕事です。人工透析の現場では、患者さんの腕に穿刺を行うなど、実際に患者さんと関わり合う必要もあります。
カテーテル検査のモニターの状況を記録するコンピューターの操作や管理、不整脈治療のために心臓を3Dマッピング装置でモニターを監視する業務、高気圧酸素治療装置の管理や保守点検、ペースメーカーや埋込み型の除細動器の保守点検など、臨床工学技士の業務の幅は広く、また、進化し続ける機器について学び続ける必要があることから、実際に臨床工学技士になった後にも継続して勉強が必要な仕事でもあります。
総合病院等病床数の多い病院で働く臨床工学技士が多いが、メーカーに就職する人も
臨床工学士の多くは医療機関に就職しますが、一部の臨床工学技士はメーカーに就職して機器の管理や営業を行う道を選ぶ人もいます。
基本的には、臨床工学技士を必要とする医療機関は病床数が多い病院である場合が多いですが、人工透析を専門とするクリニックなども就職先となります。
総合病院に就職した場合には、手術が突然はじまる場合もあるため、病院によっては夜中の呼び出しに駆けつけるといった突然の業務発生もあり得る仕事です。そのため、手術対応も行う病院に就職する場合には、体力が必要な仕事でもあります。
臨床工学技士になるには指定の大学・専門校を卒業し国家試験の合格が必要
専門学校であれば3年間、大学であれば4年間の勉強を経て国家試験に合格することで臨床工学技士になることができますが、医療機器のスペシャリストである臨床工学の勉強をするためには、物理が欠かせません。そのため、できる限り高校のうちに物理を学べる理系を選択することが大切です。
養成校では物理の基礎を学ぶ他、電気工学・電子工学についても勉強する必要があるため、数学の知識も必要です。また、学び続けるためには、海外の文献の多くが英語で記されていることからも、英語力が必要です。臨床工学技士として第一線で働きつづけたい場合には、英語の勉強も積極的に行うようにしましょう。
すでに、臨床検査技師、診療放射線技師、看護師などの医療系の国家資格を持っている人が臨床工学技士の資格を取得したい場合には、専攻科の受験を考えましょう。大学で必要な科目を勉強している場合にも、専門学校に1年間通うことで受験できる専攻科に入ることができます。
全く違う分野から医療の分野へ入ろうという場合には、大学の編入するか専門学校に入学する道を通り、臨床工学技士を目指すことになります。
臨床工学技士は、医学と工学を同時に学ぶため、人体の仕組みと機械の仕組みを学び、それぞれを融合させる必要があります。情報の解析においてはコンピューターを用いることから、情報技術に関する勉強も必要です。興味のある方は、学校の資料請求を行う他、オープンキャンパスに参加してみると良いでしょう。
専門実践教育訓練給付金を利用することで、学費が大幅に安くなる場合があります。対象になる場合には給付金を利用しましょう。
臨床工学技士として働く場合には、医療現場では、医師や看護師、その他の医療専門職との連携が必要な仕事です。また、透析を行う業務に従事する場合には、より患者さんに近い立場で業務を行うことになるため、若い人から年齢の高い人、指示に対する理解度が異なる人を相手に作業をしたり、穿刺をする必要があります。病気で不安になっているなど心理状態も様々な人を相手にする必要があることから、人の気持を理解しようと相手に寄り添う気持ちがあることも臨床工学技士の資質として必要になります。
臨床工学技士は、患者さんと直接接したり、手術に立ち会うこともあるため、状況判断の能力や集中力が必要な他、新しい技術や知識を常に探求し続ける好奇心と情熱が必要な資格でもあります。
医療系の大学・専門学校一覧にて、全国の臨床検査技師の資格取得が目指せる大学・専門学校の一覧と学校の特徴を確認することができます。
臨床工学技士の国家試験の試験内容の詳細とまとめ
臨床工学技士の合格率は72~82%程度で推移している
臨床工学技士の合格率は72%~82%程度の範囲内で推移しています。年によってバラつきがありますが、養成校では国家試験の対策も行う他、同じ目標を持った仲間と一緒に勉強を続けることができるのでモチベーションの維持がしやすいこともあり、新卒のタイミングで合格できるよう大学や専門学校でしっかりと勉強しておくことが合格の近道です。
受験者数は毎年3,000人には届かない程度ですので、それほど多い訳ではありませんが、専門学校や大学別で合格率の高さが違うため、自分が志望する学校の国家試験合格率も確かめておくと良いでしょう。
合格基準は180点満点中60%の108点以上とされています。
臨床工学技士として就職した場合の年収や待遇とキャリアアップへの道
臨床工学技士の求人が多い仕事には、血液浄化業務を行う透析専門のクリニックや、病院の透析室勤勤務です。総合病院に務める場合には、手術室勤務や、集中治療室(ICU)勤務、高気圧治療室、心血管カテーテル室などで仕事をする場合があります。また、医療機器の保守点検も仕事になるため、病院では医療機器管理室での作業も重要となります。
メーカー等に務める臨床工学技士もいますが、臨床工学技士の年収は430万円程度が平均とされています。ただし、全国規模に就職先があるため、地域差による年収の開きがあり、平均年収に届かない地域もあります。また、業務内容が高度化するほどに年収が高くなる外、研究職や民間企業に就職することで高い年収を実現している場合もあります。年収の幅としては300万円~650万円程度に収まるケースが多いと言えます。
臨床工学技士は、新たに生まれ続ける技術にも付いていく必要があるため、就職してからも学ぶことが多い資格です。文献の多くが英語であることから、英語の読解力を高めておく必要もあります。
より深く、働いている人の様子も知って資格を検討したいという方は、以下の本もおすすめです。