プロジェクトマネージャ試験はITエンジニアが受けたい上位国家試験
国家 | 目安勉強時間 | 1日2時間勉強した場合 | 1日3時間勉強した場合 | 難易度 |
600時間 | 10ヶ月程度 | 200日 | A- |
※学習時間は基本情報技術者試験の勉強からスタートした場合の目安です。
マネージャーとして活躍したいならプロジェクトマネージャ試験
応用情報技術者試験を受験してから受ける人の多い上位資格9つのうち、次のステップとして資格試験を受けようとする人の多くは、システムアーキテクト試験、ネットワークスペシャリスト試験、データベーススペシャリスト試験のいずれかを選択します。
ITエンジニアとして活躍している人の多くは、システムアーキテクト試験を受験すると思いますが、その後のステップアップに指導者としてマネージメントを行う立場になることを念頭に置いている人は、プロジェクトマネージャの資格が役に立ちます。
システム開発や組み込み系システムの開発等においては、プロジェクト全体を俯瞰してチームを率いるマネージャーの存在が欠かせません。そのため、スケジュールの管理、予算の管理、トラブルや欠陥の対応を行いながら、プロジェクトの立ち上げから完成までを監督する立場となるマネージャーの仕事はプロジェクト開発毎に必要な仕事です。
企業で働く人材として長く活躍したい方や、企業内で年収を高くしたいと考える方の場合には、こうしたマネージャとしてのスキルをアピールできる資格が役に立ちます。また、フリーランスとして仕事がしたい方の場合にも、常駐型フリーランスとしてのプロジェクトマネージャーの仕事で活躍する道があるため、プロジェクトマネージャ試験が役に立ちます。
プロジェクトマネージャーの仕事内容
マネージャーは、プロジェクトの開始から完了までの全ての段取りと監督を行うのが仕事です。
① 開発計画の目的・予算・納期の設定とクライアントとの調整・交渉
② プロジェクトチーム結成:人材の確保と仕事の割り振り
③ 進捗のチェックをしながらプロジェクトを滞りなく進める
④ 成果物をクライアントと確認。必要があれば修正を行う
上記のような工程の中で、予算や納期に関するトラブルがあれば交渉を行い、システムに欠陥があれば工程を組み直すなど、経験や知識を駆使してプロジェクトを無事成功させることがマネージャーの仕事です。
人員数などによっては、自分自身も開発メンバーとしてスキルを発揮する場面も出てくるため、プログラミング言語やシステムに関する知識への勉強も必要な仕事で、経験・スキル・知識の全てを問われる仕事ですが、高年収の求人数が多く、企業内での昇進・昇給も見込める仕事です。
プロジェクトマネージャ試験の取得がメリットになる人
国家資格の中では、プロジェクトマネージャ試験、そしてITストラテジスト試験がリーダーやマネージャとして活躍したい人のための資格です。情報処理の国家試験は、どの試験から受験しても問題なく、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験は受験せずに上位資格から受けることもできます。
ただし、プロジェクトマネージャ試験やITストラテジスト試験については、資格だけではなくチームとしてプロジェクトを行った経験や、実務としてプロジェクトに関わる仕事をしている経験がない場合、資格試験を転職活動などのアピールとして使用するのは難しいと言えます。
プロジェクトマネージャ試験の午前の2つの試験は応用情報技術者試験と大きく差が開く訳ではありませんが、午後Ⅱの試験に論述式があることが、最大の難所です。実務としてチームを率いてプロジェクトを管理する経験がある人や、チームの一員として働く中でマネージャーの仕事を見ている人にとっては、イメージが掴みやすい論述試験です。
経験を通じて得た知識や体験を言葉として3,000文字程度に書き起こす作業が必要となるため、論文試験になじみのない人は、専用の対策を行う必要があります。
国家試験であるプロジェクトマネージャ試験には更新の必要はありません。今後使うか分からないけれど資格が使える可能性のある人や、マネージメントの仕事についての知識を深めたい人、午前Ⅰの試験の免除があるうちに資格を取っておきたい人は、プロジェクトマネージャ試験に挑戦してみると良いでしょう。
ITコンサルの仕事がしたい人は、プロジェクトマネージャ試験の後には、最高峰と言われるITストラテジスト試験を受けるつもりで勉強しましょう。
※プロジェクトマネージメントに特化した国際資格にPMP試験があります。
PMPは、分野は関係なく、コストやリスクマネージメント、スケジュール管理や人材管理といったプロジェクトマネジメント・スキルの評価基準として国際的に認知されている資格です。プロジェクトマネージャーとしての資格が欲しい人は、PMPについても検討してみると良いでしょう。受験費用は555ドルです。
プロジェクトマネージャ試験の受験資格と日程と費用のまとめ
誰でも受験することができます。
対象者として、高度IT人材として確立した専門分野をもち、システム開発プロジェクトの目標の達成に向けて、責任をもって、プロジェクト全体計画(プロジェクト計画及びプロジェクトマネジメント計画)を作成し、必要となる要員や資源を確保し、予算、スケジュール、品質などの計画に基づいてプロジェクトを実行・管理する方とされています。
午前Ⅰ:多肢選択式(四肢択一):30問
午前Ⅱ:多肢選択式(四肢択一):25問
午後Ⅰ:記述式:3問中2問選択解答
午後Ⅱ:論述式:2問中1問選択解答
- 基礎理論
- アルゴリズムとプログラミング
- コンピュータ構成要素
- システム構成要素
- ソフトウェア
- ハードウェア
- ヒューマンインターフェース
- マルチメディア
- データベース
- ネットワーク
- セキュリティ
- システム開発技術
- ソフトウェア管理開発技術
- プロジェクトマネジメント
- サービスマネジメント
- システム監査
- システム戦略
- システム企画
- 経営戦略マネジメント
- 技術戦略マネジメント
- ビジネスインダストリ
- 企業活動・法務
年1回受験できます。
4月第3日曜日
午前Ⅰ:9:30~10:20(50分)
午前Ⅱ:10:50~11:30(40分)
午後Ⅰ:12:30~14:00(90分)
午後Ⅱ:14:30~16:30 (120分)
受験手数料:5,700円
【申し込み方法】
インターネットまたは郵送で申込
【受付】試験の3ヶ月程度前から1ヶ月間
札幌、帯広、旭川、函館、北見、青森、盛岡、仙台、秋田、山形、郡山、水戸、つくば、宇都宮、前橋、新潟、長岡、埼玉、千葉、柏、東京、八王子、横浜、藤沢、厚木、長野、甲府、静岡、浜松、
豊橋、名古屋、岐阜、四日市、富山、金沢、福井、滋賀、京都、大阪、奈良、神戸、姫路、和歌山、
鳥取、松江、岡山、福山、広島、山口、徳島、高松、松山、高知、北九州、福岡、佐賀、長崎、熊本、
大分、宮崎、鹿児島、那覇
約2ヶ月後にWebで確認できます
プロジェクトマネージャ試験の試験内容と詳細
応用情報技術者試験に合格している場合、2年以内であれば午前Ⅰの受験は免除されます。また、上位資格のいずれかの試験に合格しているか、午前Ⅰの試験で基準点を満たしている場合にも午前Ⅰの試験は免除されます。
応用情報技術者試験は、レベル3に対応する全般的な情報技術関連知識が問われる試験でしたが、プロジェクトマネージャ試験では、午前Ⅱの試験で、プロジェクトマネジメントについて最上位のレベル4の難易度が求められます。
そして、最大の難関である午後の試験については、記述式と論文形式です。午後の試験の出題内容は以下の通りです。自分の経験を踏まえて、欠陥や予算不足といったトラブルに対応する事例についての論述解答を行います。
1.プロジェクトの立ち上げ・計画に関すること:プロジェクト,プロジェクトの目標,組織の戦略と価値創成,プロジェクトマネジメント,マネジメントプロセスの修整,プロジェクトの環境,プロジェクトライフサイクル,プロジェクトの制約,個別システム化計画の作成と承認,プロジェクト憲章の作成,ステークホルダの特定,プロジェクトチームの編成,システム開発方針の設定,プロジェクト全体計画(プロジェクト計画及びプロジェクトマネジメント計画)の作成,スコープの定義,要求事項と優先度,WBS の作成,活動の定義,資源の見積り,プロジェクト組織の定義,活動の順序付け,活動期間の見積り,スケジュールの作成,コストの見積り,予算の作成,リスクの特定,リスクの評価,品質の計画,調達の計画,コミュニケーションの計画,関連法規・標準 など
2.プロジェクトの実行・管理に関すること:プロジェクト作業の指揮,ステークホルダのマネジメント,プロジェクトチームの開発,リスクへの対応,品質保証の遂行,供給者の選定,情報の配布,プロジェクト作業の管理,変更の管理,スコープの管理,資源の管理,プロジェクトチームのマネジメント,スケジュールの管理,コストの管理,リスクの管理,品質管理の遂行,調達の運営管理,コミュニケーションのマネジメント,マネジメントプロセスの改善,機密・契約の管理,プロジェクトに関する内部統制 など3.プロジェクトの終結に関すること:プロジェクトフェーズ又はプロジェクトの終結,プロジェクトの評価指標と評価手法,プロジェクトの完了基準,プロジェクトの計画と実績の差異分析,検収結果の評価,契約遵守状況評価,得た教訓の収集,プロジェクト完了報告の取りまとめ など
プロジェクトマネージャ試験に合格するための学校選び
大手予備校のTACでは、4万円台~7万円程度でプロジェクトマネージャ試験の講座が開講されています。論文の添削などもあるため、人に自分のレベルをチェックしてもらいたい人におすすめです。DVDかWEB講座になります。
また、情報系の通信講座を提供しているiTecでは、16,000円程度~6万円前後で通信教育を受けることができ、論文対策のみや、午前Ⅰのみ免除のコースなど、自分の希望に合わせてコースを選択することができます。
上位資格で受験者数がそこまで多くないこともあり、それほど多く予備校の講座がある資格ではありませんが、論文対策だけ・午後のみなどを選択して通信教育を利用しても良いでしょう。
一般教育給付金を利用することで、ハローワークから学習の支援手当を受けられる場合があります。対象の講座に当てはまる場合には、申請を行い学費負担を減らしましょう。
プロジェクトマネージャ試験に独学で合格するには
プロジェクトマネージャ試験を受験する人々の多くは、既にチームで働いた経験や、リーダーとして仕事をした経験のある人も多いため、独学で合格を目指す人も多くいます。
長文を自分で書かなくてはいけない論文対策として、文字を書くことが苦手な人は別途通信教育等を利用するという方法もありますが、参考書で論文対策を行うこともできます。
論文試験では、自分自身の経験に基づいて、プロジェクトをどう組み立てるかや、問題があった場合にはどう対処するか実践的な回答が求められます。論文試験対策を行うことで、実務経験がなくても試験に合格することは可能です。
個人によって、論文試験の得手不得手があるため、論述の得意な人ほど勉強時間はそれほどかからずに合格している傾向があります。長文を書くことに慣れていない、問われている内容を把握し、順序立てて問われている内容の全てに答えるための練習がしたい人は、論文のみ添削を受けるなどの工夫をすると良いでしょう。
普段書き慣れていない人が、本番でいきなり3,000字で論理的な文章を書くのは厳しいものがありますので、試験勉強と合わせて、論文対策も十分に行った上で試験に臨みましょう。
よく使われている参考書は以下の通りです。
※テキストには相性があります。必ず中身を確認してから購入しましょう。
論文試験の対策に絞った参考書もあります。
合格率は13%~14%程度で推移している
上位資格になるため、合格率はそれほど高くはありません。合格率は大きくぶれることはなく、同程度の水準で推移しています。
午前・午後の試験ともに60%以上を得点すると合格できます。論文試験についてはランクAの評価で合格となります。
プロジェクトマネージャ試験への求人と年収・時給の目安
IT分野の年収は、350万円~700万円程度が主流ですが、プロジェクトマネージャ試験に合格し、マネージャー職に就く場合には、500万~1,000万円程度の年収が多くなります。
プロジェクトマネージャーの求人には、企業によっては、1,000万超えの年収で応募しているところもあります。これまでの経験に自信のある人は、資格試験を受験後、転職を考えてみるのも良いでしょう。
また、フリーランスとして活躍する道もあります。プロジェクトマネージャーの場合は、フリーランスとは言っても、一定期間は常駐する仕事を請け負う形が多くなります。月単価100万円を超える案件も多く、経験によってはフリーランスで1,500万円程度の年収を得ることもできます。
幅広い知識を身につけて、次の資格としてITストラテジストを目指し、ITコンサルタントやCIO(最高情報責任者)として活躍する道もあります。
一度技術が身につくと、派遣として高時給で自由な時間で働く方法や、フリーランスとして働く、在宅で働くといった選択ができることがIT系分野の魅力でもあります。
IT分野に興味があり、技術を身につけてフリーで働きたい人こそ、IT関連の資格やプログラミング技術が役に立つでしょう。海外での活躍が期待できるのも、IT分野の強みです。