119番で現場に駆けつけ救急手当を行う救急救命士は医療系国家資格
国家 | 基本学修年数 | 専門学校 | 大学 | 大学受験難易度 |
2~4年 | 2~3年 | 4年 | 低~高 |
※大学・大学院は、選ぶ大学によって難易度が大きく異なります。
救急救命士は消防官として就職した後に働きながら目指す方法もありますが、その場合には資格取得までの時間は学校に通った場合よりも長くかかります。
救急隊員として現場に駆けつけ医師の指示に従い医療行為を行う救急救命士
救急車または消防車で現場に駆けつけて救急の手当を行う救急救命士は、救助を必要としている人がいる現場や救急車の中で、医師の指示にしたがって医師に代わり医療行為を行うことができる救急のプロのための資格です。
救急救命士が行える医療行為は法律によって限定されていて、行える場所も現場と救急車両の中のみに限定されています。そのため、救急救命士の資格を生かして働く場合、消防署、消防庁、消防局が就職先としての第一候補となります。救急救命士は消防官としても働く場合があること、24時間働き続ける場合もあることから、主に求められているのが体力と力のある人材であり、まだまだ女性の数は少ない資格です。
救急救命士としての資格を生かして仕事ができる現場は、救急隊の仕事です。救急救命士は現場に駆けつけた後、現場、および救急車の中で特定行為として点滴を行う他、薬剤を点滴に加えたり、気道確保のために気管にチューブを入れたり、人工呼吸を行うなどの医療行為を行います。
救急搬送されることになる傷病者の中には、救急隊が到着してすぐの処置がなければ命が危ない場合もあります。なるべく早く必要な処置をすることで、その後の命を助けるために、救急救命士は医療行為を医師に代理して行います。
多くの救急救命士が消防本部の消防隊に就職することになりますが、救急救命士は救急車で現場に駆けつける「救急隊」に属することになります。例えば東京消防庁ではヘリコプターによる救急救命処置を行う「航空隊」があるように、救急の場は救急車の中だけとは限りませんが、119番に応じて現場に駆けつける救急隊の仕事は、日によっては24時間ずっと現場に駆けつける場合もあるほど過酷な場合もあり、救急救命士を目指すためには体力が重要な要素となっています。
消防本部には救急隊員でありながら消防隊員としても働く場合もあるので、消防隊員として消防車に乗りながら、救急救命士として仕事をしている人もいます。
資格を生かすため、多くの救急救命士の有資格者は消防本部に就職しますが、中には、医師が同乗して患者を他の病院へ移動させるドクターカーに乗り込むスタッフとして働く他、民間の企業や福祉タクシー、介護タクシーの仕事に就く人もいます。また、医療知識を生かして学校の養護教諭や体育の教諭になる他、消防以外の仕事で公務員になる場合もあります。
救急救命士になるには指定の大学・専門学校を卒業し国家試験に合格するか、消防士として就職してから養成コースで救急救命士を目指す
救急救命士のためのカリキュラムのある医療系の大学やスポーツ科のある体育大学、救急救命士になることを目標にした専門学校に行くことで、受験資格を得ることができますが、高校卒業後に専門学校に入り、2~3年の学習を経て国家試験に合格するか、4年間大学で学んでから国家試験に合格する道の他に、救急救命士は消防官として就職した後に働きながら目指す方法もあります。
①消防内で養成コースに入る道は就職先が決まっている点がメリットとなる
高校卒業後にすぐ消防官として就職する場合や、救急救命士の資格取得のためのカリキュラムのない専門学校・大学等を卒業後に消防に就職する場合に救急救命士になりたいと決意した場合には、公務員として働きながら、救急救命士を目指すことになります。
そのためには、まずは消防本部に公務員試験に合格して就職する必要があります。その後、消防官として消防車に乗り、その後に救急隊になる訓練を受けて救急車に乗り、希望者だけが救急救命士の資格取得のためのコースを受講するこができるようになります。
働きながら資格を目指せるので金銭的な負担がなく、勉強中にも給与が出るところはメリットですが、まずは消防隊員としてしっかり働けるようになり、その後は救急隊員としておよそ5年以上働いた上で、定員数に応じて救急救命士の資格養成講座を受けることになるので、救急救命士になるまでの時間が長いこと、必ずしも養成講座を受講できるとは限らない点から、はじめから「救急救命士」を目指すのであれば、専門学校か大学へ行くことを検討する必要があると言えます。
②大学で養成コースに入る場合には即戦力として採用される確率が高くなる
本格的な訓練や実践を行うことができるコースを持つ大学では、雪山や海での実習の他、様々な現場体験を積むことができるため、大学卒業後に即戦力として現場に出られる人材になることができますが、4年制大学の救急救命士のコースは費用が一般の大学より高くなります。
実習に必要なお金や機材に費用がかかることから、4年間の学費が600万円を超える場合もあるため、学費を払えるかどうかを検討しながら大学進学を考える必要があります。
教職を取って体育の教師を目指すこともできる他、養護教諭を目指す、または知識を生かして民間の企業に就職するなど、仕事の選択肢が広がる点は4年制大学に行くメリットです。
③専門学校で養成コースに入る道は最短で救急救命士になることができる
専門学校の養成コースを選んだ場合には、短ければ2年間で資格取得を目指せます。必要最低限のことを集中して学ぶことができるので、早く資格を取得して就職したい場合には、専門学校を選択すると良いでしょう。
消防官採用試験は難関でどの消防本部も倍率が高いため、希望通りに消防官になれるとは限らない
救急救命士の主な就職先は自治体の消防署であるため、地方公務員・消防官採用試験を受験して合格しなくては救急救命士の資格を最大限生かして働くことは難しくなります。
消防本部で救急救命士として活躍するには、専門学校や大学で国家試験の合格を目指しながら、同時に公務員試験合格を目指す必要があります。試験は、筆記試験の他に、身体検査、体力検査、面接が行われますが、東京消防庁の例でいうと、大卒が受験資格のⅠ類で300名程度の定員に対し、2回募集のあるⅠ類の倍率は17倍~21倍程度もあり、消防官の人気がとても高いのが分かります。
消防官を最も多く排出している大学は国士舘大学です。救急救命士を目指せる学校では、最終的には消防官試験への合格を目指してカリキュラムが組まれていることもあり、学校によってどのようなサポートが受けられるかを事前に調べておくと良いでしょう。
消防官の合格倍率はとても高いので、消防官として採用されなかった場合にはどのような道に行くかを考えておくことも大切です。救急病院等で働く道を選ぶ場合には、救急指定病院や、ドクターカーを運用している病院の採用試験を受けることで就職することができます。民間でも救急出動を手掛ける企業が出てくるなど、救急救命士の働く場が広がりつつあるため、資格を生かした就職先が他にもあるということを頭に入れておきましょう。
医療系の大学・専門学校一覧にて、全国の救急救命士の資格取得が目指せる大学・専門学校の一覧と学校の特徴を確認することができます。
救急救命士の国家試験の試験内容の詳細とまとめ
救急救命士の合格率は83~91%程度で推移している
救急救命士の国家試験の近年の合格率は89~91%と高めですが、年によって多少のバラツキはあります。養成校では、国家試験の対策も行う他、同じ目標を持った仲間と一緒に勉強を続けることができるので、モチベーションの維持がしやすいこともあり、新卒のタイミングで合格できるよう大学や専門学校でしっかりと勉強しておくことが合格の近道です。
救急救命士を目指す人は、公務員試験の勉強を続ける必要もあるため、公務員試験の準備も早めに行う必要があります。体力テストもあることから、体力づくりも欠かさないようにしながら、国家資格試験と、公務員試験の両方を目指す必要があります。
試験の問題は、必修問題と通常問題に別れていますが、およその目安としては必修問題では80%以上、通常問題で60%以上を得点すると合格となります。
救急救命士として就職した場合の年収や待遇
消防署において救急隊員として働く場合には、夜勤手当や出動手当が加算されることで年収に変化が出るため、多少前後しますが、新卒で就職した場合には年収は400万円~となり、定年前には800万円程度まで上がる可能性があります。
出動が多い現場で働いている場合には年収が1,000万円近くになることもありますが、平均では600万円程度と言えます。
民間企業に就職した場合には、企業によって年収が異なりますが、公務員として就職した場合の平均年収は同程度ですが、手当等を加味すると、消防隊で働く消防官の給与の方が高めと言えます。
介護タクシーなど、医療に関わる民間の仕事に就く場合などは、年収は400万円程度が平均的です。
消防官として働くためには、常に体力づくりに気を使い、風邪を引かないように健康管理に気を使う必要がある上に、救急救命士として知識のアップデートをし続ける必要があることから、勉強・運動の両方が欠かせない大変な仕事でですが、救急の現場で命を助けることができることから、人を助けたい、体力を生かして医療系に関わる仕事をしたいと考える方は、一度検討してみたい仕事と言えます。
より詳しく仕事内容や資格について知りたい方は、書籍を参考にするか、オープンキャンパスなどに参加してみましょう。