助産師は妊娠・出産・出産後の母体と新生児を支える必須資格の仕事
国家 | 基本学修年数 | 専門・短大 | 大学 | 大学受験難易度 |
4年 | 4年 | 4年 | 低~高 |
※大学・大学院は、選ぶ大学によって難易度が大きく異なります。
日本では、法律で助産師は女性のみとされているため、助産師は女性を対象にした資格です。
助産師は、病院・診療所・助産院の他に保健所等で妊娠・出産を助ける仕事
助産師の資格は看護師資格を前提とした資格です。そのため、看護師資格を取得することができる学校において助産師養成課程を受講するなどして助産師の受験資格を得ることになります。(看護師については詳しくはこちらを参照下さい)
看護師として働くこともできる助産師は、主に病院・診療所、または助産院において働いていますが、お産にかかわる助産師は世の中に無くてはならない仕事です。保健所や地域の保健センターでも助産師は活躍していて、母子の保健活動を行いながら、母親学級や両親学級を開いて情報提供を行い、地域の妊娠・出産を支えています。
保健所では、保健師ととも働きながら、感染症対策や大規模災害・緊急事態に備えた健康危機管理を行う他に、母子支援として、両親学級や子育てグループの実施、家庭訪問、乳幼児健康診査、児童虐待予防などの対応を行います。(保健師について詳しくはこちらを参照下さい)
妊娠・出産を予定している女性の中には、経済的に困窮している方や様々な問題を抱えている方もいるため、助産師は、看護師や医師以外にも臨床心理士や認定心理師やその他の医療従事者、行政で働くソーシャルワーカー等との連携が必要な仕事です。
助産師の仕事は妊娠中から出産後までの長期にわたり妊婦さんを助けること
出産なく人が生まれることはないため、古くからお産を助ける職業は存在していました。
二足歩行をするようになった人類は、身体の機能を維持するために生理的早産として「親が子供をつきっきりで世話をする必要のある状態」で子供を生むようになりましたが、そのことが助産と産後のケアを発達させます。
かつては、子育てを経験したおばあさんが産婆として活躍することの多かった助産の仕事は、現在では医療的な専門教育を受けた助産師の資格を取得している人が行なっています。
助産師は、女性の妊娠・出産までの間と、出産後6~8週間後までの産褥期の間のサポートやケア、アドバイスを行うのが仕事であり、母体のケアの他に新生児のケアや乳児のケア、正常出産を行えるようにするための支援や、医療的な支援を行います。
出産前の妊婦さんには、食事や運動に関する生活や健康の指導の他に、母親・父親になるために必要な知識の提供や、相談業務を行い、出産時には、赤ちゃんを取り上げるために他の助産師や看護師と連携しながら出産の手伝いをします。その後、出産後には、母体の状態を確認しながら母乳の指導や乳児の保健指導を行い、退院までの生活を支えます。
赤ちゃんは、必ずしも無事に生まれるとは限らないため、希望通りの出産ができなかった場合に母親や家族のケアを行ったり、出産時の思わぬトラブルの際には医師や他の病院と連携を取るなど、助産師は他の医療従事者との連携が重要な仕事です。
助産師は、病院や診療所で働く他に「助産院」で働くという選択ができますが、助産師は、助産院を開業できるとされており、独立して自然分娩を助けるための助産院を開業して、様々な助産スタイルを提供している助産院もあります。ただし、助産院では、妊婦と赤ちゃんに問題がない正常分娩のみを扱うため、必ず病院と連携して出産に臨むことになります。
出産のスタイルは様々で、必ずしも病院で生むことを選ぶ人ばかりではありません。10ヶ月ある出産までの期間に自然に生むためにトレーニングをしたり、食事に気を配りながら、本人が希望する姿勢やスタイル(横にならないで出産する、水の中で出産するなど)を提供している助産院もあります。
現在では、無痛分娩など、病院で処置を受けながら出産するスタイルが多く選択されるようになっているため、病院や診療所で出産する数の方が圧倒的に多いこともあり、多くの助産師は病院や診療所に務めて、交代制で働く場合が多いと言えます。
出産は、昼夜を問わずに起ることであり、さらに夜に産気づく妊婦さんが多いこともあり夜勤もある仕事ですが、子育てに理解がある人々が集まる職場であることから、子育てしながら働きやすい資格と言えるでしょう。
助産師になるには指定の専門・短大・大学を卒業し国家試験の合格が必要
助産師を目指すには、看護師資格を取得する必要がありますが、看護師になるには最低でも3年間の専門教育が必要です。それに加えて助産師の資格取得のための学習を行うので、助産師を同時に目指せる専門学校や大学は4年制となります。
助産師の資格取得を前提としたカリキュラムを組んでいる専門学校や大学を卒業すると、卒業と同時に看護師と助産師の国家試験を受験することが可能です。
看護師と助産師の資格は同時受験することはできますが、看護師の資格試験に合格しなかった場合には、助産師の試験に合格しても助産師として認定はされません。(その後看護師資格に合格すれば認定されます)
助産師を目指すために必要なカリキュラムを受講していない場合で、看護師の資格を取得して就職した後に助産師を目指す場合には、専門学校か大学、または大学院において1年以上学び、その後国家試験を受験して合格する必要があります。
助産師の資格を目指す上では、実習などを通じて出産の現場を知りながら試験に合格後、病院や診療所を中心に就職活動をしていくことになります。地域の保健所等において助産師になりたい場合には、都道府県や自治体の1次試験で小論文や専門科目の筆記試験、公務員試験等の審査を受け、2次試験では面接試験を受けた上で合格し、地域の保健所や保健センターに就職する必要があります。
看護師資格とともに助産師も目指したいという方は、勉強する期間や、専門学校へ行くのか、大学に編入するのか、それとも大学院へ進学するのかといった面を考慮した上で、保健師のカリキュラムを導入している学校を選びましょう。
大学や短大卒業後に看護師に興味を持った方は、専門実践教育訓練給付金を利用することで学費が大幅に安くなる場合があります。対象になる場合には給付金を利用しましょう。
助産師の国家試験の試験内容の詳細とまとめ
助産師の合格率は93~99%程度で推移している
助産師の合格率は、93%~99%程度で推移しています。合格率が低い年でも93%と、合格率は高めです。
養成校では国家試験の対策も行う他、同じ目標を持った仲間と一緒に勉強を続けることができるのでモチベーションの維持がしやすいこともあり、助産師の合格率は新卒者の場合には93~99%程度の合格率である場合が多くなっています。
反対に、既卒者の場合の合格率は年によって合格率がバラバラであり、50%程度の時もあるため、新卒のタイミングで合格できるよう大学や専門学校でしっかりと勉強しておくことが大切です。
得点基準は年によってわずかに前後しますが、およそ60%以上得点できれば合格となります。
助産師として就職した場合の年収や待遇
助産師の年収は平均で500万円を超えると言われていて、年収は比較的高めと言えます。都道府県や自治体等で働く行政の助産師の場合には、平均が530万円程度であり、病院や診療所等で働く助産師として活躍する場合には、600万円程度の年収を期待することができます。病院によっては平均年収を下回る場合もあるので、必要に応じて転職等も視野に入れながら、助産師としてスキルを高めていく必要があります。行政で働く場合には、安定して、かつ福利厚生がしっかりとした環境で働くことができるでしょう。
助産師として開業した場合には経営についても学ぶ必要がありますが、そこでしか提供できない出産のスタイルを求めて人が集まる場合には、年収を高くすることもできます。開業したいと考える助産師の数は年々減っていますが、提供したい出産のスタイルがある場合には、勉強を重ねながら開業へ向けて踏み出してみるのも良いでしょう。
助産師の資格を生かして民間企業で働く、起業するといったケースもありますが、助産師を目指す人は、赤ちゃんを取り上げたい、お産に関わりたいという人が多く、現場で働いていたいと考えて病院や診療所に就職する場合や、行政で母子支援の活動に携わりたいと考える人が多い傾向にあります。
看護師として働いた後で、助産師を目指す人も多く、その場合には、助産師になりたいと思った時点で専門学校や大学、大学院で学んでから助産師として働くと良いでしょう。
助産師についてより詳しく知りたい方は、下記のような図書を参考にしてみましょう。