保育士は働き方を選べる全国規模で就職に強い国家資格
保育士の資格試験は専門教育を受けていなくても受験可能
保育士の資格取得には、①専門教育を修了して保育士資格を自動的に取得する(試験を受けない方法)と、②保育士試験を受験して合格することで資格を取得する方法があります。
国家 | 資格取得の方法 | 目安勉強時間 | 期間 | 難易度 |
保育士の専門教育を受ける | 大学(通信・編入含む)・専門学校を卒業するまで | 2~4年程度必要 | B- | |
大卒・専門卒他 | 150時間程度 | 3~6ヶ月程度 |
保育士資格は求人が多く、働き方や給与を選べる資格
保育士の資格は、働く場所が幅広く選べる資格です。文部省管轄下にある幼稚園の教員の資格が、教育者として幼稚園の現場で働く事に限定されている一方で、厚生労働省の管轄する福祉分野での国家資格である保育士は、幼児の保育に携わる仕事であればどんな現場でも働ける資格であり、広く全国で使える資格です。
地域の保育園はもちろんですが、企業やレジャー施設の保育所や、病児保育などの保育施設の他、インターナショナルスクールや幼児教育を行う教室などの教育現場、乳児院や、母子生活支援施設、児童養護施設や助産施設、知的障害児施設などで働くことも選べます。
また、共働きの夫婦が増え、ベビーシッターを必要としている人が増えている現在では、保育士の資格を持っているシッターさんへのニーズも高く、保育士の資格を生かして高時給で短時間のみ働く方法もあります。
少子化により子供が減少しているといっても共働きが増えている中では、保育園や幼稚園、病児保育やベビーシッターといった、子供を預かる職業へのニーズは、子供の数が多かった過去よりも増えています。
ある一定数に達するまでは、保育士不足は解消されず、今後も求人数が増え続けることが考えられます。
保育士になるには資格が必要ですが、資格取得には①大学や専門学校等で保育士としての専門教育を受けて卒業し、自動的に保育士資格を得る方法と、②保育士の資格試験を受ける方法があります。
大学や専門学校・指定の養成所で保育の教育を受けて保育士になる
大学受験の前に、保育士を目指すことを決定している人は、進路として保育士の資格を卒業と同時に取得できる大学や専門学校を選ぶと良いでしょう。保育士コースのある大学や専門学校の多くは、卒業と同時に幼稚園と保育士の両方の資格を取得できるカリキュラムになっていることが多く、卒業後すぐに保育の現場で働くことができます。
4年生の大学に通う場合には、保育士資格の他にも、幼児教育について勉強しながら幼稚園の教員や小学校の教員などの教員免許取得も併せて取得することもできます。
一度別の大学を卒業している人で、編入して保育の勉強をしたい人、社会人になった後で大学や専門学校を目指そうと考えている人も、大学や専門学校、通信のある大学等を利用して自動付与の形で保育士資格を得ることもできます。
現場での実習を経て資格を得たい方や、どんな形で幼児教育に関わるか悩んでいて、幼稚園や小学校などの教員資格も取得したいと考えている方は、大学・専門学校への入学や編入を考えてみると良いでしょう。
専門教育は受けずに保育士試験の合格を目指す場合
専門教育を受けずに保育士試験を受験する場合には、自分に受験資格があるかどうかを確認する必要があります。
保育とは全く関係のない大学(短大を含む)や専門学校を卒業した場合や、保育とは関係のない大学・専門学校に在学中であれば保育士資格を受験することができます。(大学は、中退であっても62単位を取得していれば、保育士を受験することができます。)
保育士のコースがある高校を卒業した方も保育士試験の受験資格があります。保育士は、中学卒業や、保育とは関係のない普通科や工業科等の高等学校を卒業した人にも、実務として保育関係の仕事をしていた人には受験の機会があります。年齢にも制限はなく、幅広い人に受験の可能性があるため、資格取得を考えて悩んでいる人は、資格受験が可能かどうかを全国保育士養成協議会のページから確かめてみましょう。
働く地域が限定されている人は地域限定保育士試験を目指す方法もある
特定の都道府県のみ受けられる地域限定保育士試験は、保育士不足解消のために行われるようになった試験です。特に保育士が不足している地域では、保育士確保のために2次試験の実技試験を免除し、講習のみで地域限定保育士として認定し、自治体に「登録」して3年が経過すれば、4年目以降は全国で保育士として働けるようにする制度を設けています。
現在は、保育士の資格試験が年に2回受けられるようになったこともあり、地位限定保育士試験が開催されている地域は少ないですが、地域限定でしか働く予定がない方で、実技の免除がある地域限定保育士試験が住んで居る地域にある場合などは、受験を検討すると良いでしょう。
筆記試験の難易度や受験資格については保育士試験との差はないため、地域限定保育士試験に合格している場合、筆記試験は免除となりますので、保育士試験の実技のみ受けて全国で使える保育士資格取得を目指すこともできます。
保育士の受験資格と日程と費用のまとめ
保育士の筆記試験の試験内容の詳細と合格率
保育士試験の合格率は、20%程度で推移しています。保育士試験を受験する人の多くは、保育の教育を受けていた人ではなく、独学や通信講座、予備校等を利用して受験することを選んだ人であり、専門教育を受けていない人が多いことに加えて、受験科目数が多く、2日間にわたる試験であることも合格率を下げている要因と言えます。
受験科目は9科目ありますが、その全てについて、6割以上の得点がないと筆記試験合格にはなりません。一度に全て合格できず、科目合格をした場合には、3年間は当該科目の受験が免除されるため、不合格科目に集中して筆記を突破すると良いでしょう。
3つの中から2つを選んで受験する保育士の実技試験
筆記試験に合格した場合、実技試験を受けることができるようになります。実技試験は、筆記とは別の日程(2ヶ月程度後)で受験します。
朝8時代には受験会場に到着してガイダンスを受け、受験のために選択した2つの実技項目について指定の時間に受験します。音楽、絵、お話のいずれかのうち2つを選択し、音楽とお話については試験官の前で1人で披露、絵については試験場で時間内に作品を仕上げます。それぞれに、課題が与えられており、クリアすべき基準に合格すれば、保育士資格取得が可能になります。
1.音楽表現に関する技術
求められるもの:保育士として必要な歌、伴奏の技術、リズムなど、総合的に豊かな表現ができること。
伴奏(ピアノ、ギター、アコーディオンのいずれか)に合わせて、事前に与えられる課題曲の歌を歌います。楽譜の持ち込みはできます。
2.造形表現に関する技術
求められるもの:保育の状況をイメージした造形表現(情景・人物の描写や色使いなど)ができること。
鉛筆、シャープペンシル、色鉛筆を用いてA4版の用紙に絵を描きます。保育の現場をイメージした課題が当日出題されます。
3.言語表現に関する技術
求められるもの:保育士として必要な基本的な声の出し方、表現上の技術、幼児に対する話し方ができること。
課題のお話の中から選んだお話について、3分間でまとめ、表現できるように準備します。人形や絵本などは持ち込めないため、事前に十分練習しておく必要があります。身振り手振りなどの表現についても審査されます。
保育士試験の実技は、造形以外については、試験官の前で披露しますので、事前に人に見てもらうなど、緊張しないための準備も必要です。実技の講習等を受験する、youtubeなどで公開されている実技対策を参考にするなどして、事前準備をしっかりしましょう。
保育士の資格を独学で取得する・予備校や通信教育を利用する
保育士の資格に独学で合格している人もたくさんいます。暗記が得意であったり、一人で勉強することに抵抗のない人は、適切な参考書を利用して、全ての科目について6割以上を得点できるように準備しておくことで、筆記試験に合格できるでしょう。独学に抵抗のない人であれば、半年程度の準備期間があれば、十分に準備可能です。
(※テキストには相性がありますので、必ず中身を確認してから購入しましょう)
独学に自信がない方は、通信講座や予備校を利用することを検討しよう
机に向かえば自然と勉強できる人もいますが、一人では気が散って勉強ができない人や、何からどう進めれば良いのか分からないという人もいます。
テキスト出版も行っているヒューマンアカデミーの通信教育、たのまな保育士講座(実技対策込みで6万円程度)などが通信の保育士教育では有名ですが、通信講座の場合、勉強の期間が定められていて、何を、どうやって、どれくらい勉強したら良いかについて悩まずに済むところが魅力です。
他にも、ユーキャンの保育士講座(実技対策込みで6万円程度)や、資格のキャリカレ(筆記対策で3万円程度)などがよく利用される通信講座です。
勉強がどれくらい進んでいるかテストで確かめたい、添削やアドバイスが欲しい人は、実技まで対策が必要かどうかなどを含め、通信教育を検討してみると良いでしょう。
数は少ないですが、通学型の保育士資格試験対策学校もあります。人から教わらないとやる気がでないという人は、通学講座を探してみるのも良いでしょう。
一般教育給付金を利用することで、ハローワークから学習の支援手当を受けられる場合があります。対象の講座に当てはまる場合には、申請を行い学費負担を減らしましょう。
資格を検討しているうちに、保育の現場での実習や、子供の教育についてしっかりとした理念を持ちたいと感じた方は、大学編入や専門学校も、選択肢として検討してみましょう。どう資格を利用したいかによっても、学び方は異るものです。
保育士の資格への求人と年収の目安
保育士を生かした仕事は、教育現場、保育現場、医療現場など様々です。
そのため、年収にも幅がありますが、一般的にイメージされる保育の現場としての保育園や保育施設で働く場合の年収は、300万円前後となっていますが、地域によっても、公立か、私立の保育園かによっても、時給や年収は異なります。
保育士は、保育士不足解消のためもあり、年収や待遇は上昇傾向にあります。ただ、営利目的で行う事業とは異なるため、年収の水準としては低い部類に入ります。
それでも、英語資格を生かして、インターナショナルスクールや、英語学習を行う保育所で働く場合などは、給与水準が年収400万円程度となります。特別な幼児教育を行うことができる現場で働くには、保育士資格とは別に、特技を証明する資格等が必要になりますが、このように、より高い年収で保育士として働く方法もあります。
また、近年需要が高まっているシッター業務を行うことで、年収500万円以上を目指すこともできます。子供の教育に熱心な親や、富裕層の中には、保育士資格を持っていて特別な教育を行うことができるシッターを雇いたいと考えている人もいます。日本語以外の言語や、リトミックなどの特別な幼児教育プログラムに詳しい人は、「特別な教育を行える保育士」として、小学校低学年程度までの子供を対象に、シッターとして保育を行う道もあります。
保育士が必要とされる機会が増えたこともあり、保育士の働く現場の環境や、給与の見直しが進んでいます。過去と比較して、全体的に給与水準が改善されている他、働く時間の短縮化も進んでいます。また、全国規模で職場があり、幅広く保育の現場を選ぶことができる他、時給ではたらく、正社員ではたらく、起業をするなど、働き方が選べるのも保育士資格の魅力です。