弁理士資格は知財を守る特許申請を助ける難易度の高い国家資格
国家 | 目安勉強時間 | 1日6時間勉強で | 1日3時間勉強で | 難易度 |
3000時間程度 | 約500日 | 3年程度 | S |
特許申請の難しさと独占業務が弁理士の職を保障する
弁理士は誰でも受験できる資格で、独立開業している人、就職して企業に勤めている人のどちらも多い仕事です。
新しい発明をした人や企業の多くは、その技術やアイデアが他者に先行して使用されないように特許を申請しようと考えます。その際には、今までに同じアイデアが出てきてはいないか、他の特許と被っている部分はないかなど、先行特許の確認を行い、さらに、特許として認められるために必要な書面を、特許申請のための独特な言い回しで出願する必要があります。
こうした業務は煩雑で膨大なため、多くの人は専門家である弁理士に依頼をして、業務を代行してもらおうと考えます。
弁理士は、特許に関する鑑定や判定、評価や、特許権に抵触している製品にかかわる紛争解決、著作権の管理業務やコンサルティング業を行うことになります。
特許の対象となる技術は多様なため、あらゆる分野の新しい技術や製品に関する情報と携われることが魅力です。
知財に関わる仕事をしている、興味のある人の場合には、特許庁へ民間から応募して就職をし、5年以上の経験を積んで弁理士になるという方法もあります。
特許庁に勤めていたアインシュタインが特許の仕事を行いながら物理学の発想を広げたように、弁理士としての仕事は、発明や技術開発に興味がある人にとっては色々な発想に触れることができ、発想力を豊かにすることのできる仕事です。
相手の技術を理解するために、言葉を読み解く力も必要となる特許申請においては、調査力や特許を通すことを前提に置いた顧客のための職務姿勢や粘り強さが必要となります。
特許庁とのやり取りを含め、交渉力も必要となりますので、技術やアイデアに対する熱意と興味のある人が向いている仕事と言えるでしょう。
知財に関わる業務は幅広く発展性がある
特許事務所に就職する
特許事務所に勤める選択をする人が多い弁理士ですが、得意分野を生かして将来的には独立を考える人もいます。
企業内弁理士として働く
企業によっては知財の専門家を必要としているところもあります。企業内の知財の特許申請を引き受けることになりますので、特定の分野に強い弁理士になっていきます。
コンサルティング業務を行う
特許技術に関する製品を扱う中小企業は多く、そうした企業へのコンサルティング業務が求められる事もあります。
国際業務
技術発展は世界で行われているため、国際的に活躍できる弁理士も求められています。語学力があれば、国外で活躍する選択もできます。
弁理士の受験資格と日程と費用のまとめ
誰でも受験できます。
短答式試験:五枝択一:マークシート方式 3.5時間
論文本試験【必須科目】
特許・実用新案:2時間、意匠:1.5時間、商標:1.5時間
論文本試験【選択科目】
願書で希望した科目について解答する。1.5時間
口述試験
必須の論文試験で受験した内容について口頭で問われる。科目毎に10分程度
【短答式試験】工業所有権に関する法令
- 特許・実用新案に関する法令 20題
- 意匠に関する法令 10題
- 商標に関する法令 10題
- 工業所有権に関する条約 10題
- 著作権法及び不正競争防止法 10題 全60題
【論文本試験(必須)】工業所有権に関する法令
- 特許・実用新案に関する法令
- 意匠に関する法令
- 商標に関する法令
【論文本試験(選択)】
理工I(機械・応用力学)
理工II(数学・物理)
理工III(化学)
理工IV(生物)
理工V(情報)
法律(弁理士の業務に関する法律)
上記のうちどれかの科目を選択
【口述試験】論文本試験の必須科目の内容について問う試験
年1回の試験です。
① 5月 短答本試験
合格した場合2年間試験免除
短答式試験の合格者のみ論文試験を受けることができる
② 6月 論文本試験(必須)
合格した場合2年間試験免除
③ 7月 論文本試験(選択)
合格した場合永久に試験免除
④ 10月 口述試験
受験手数料:12,000円
【願書配布】3月上旬から4月上旬
特許庁、各経済産業局知的財産室、日本弁理士会
郵送での取り寄せも可能
インターネット上で受験願書を請求することもできる
【受付】3月上旬から4月上旬
短答式試験:東京、大阪、仙台、名古屋、福岡
論文試験:東京、大阪
口述試験:東京
短答式試験:6月
論文式試験:9月
口述式試験:10月末頃
弁理士の試験内容についての詳細
弁理士の試験は、受験回数の多い試験です。マークシート式の試験である短答試験に合格すると、論文本試験を受験することができ、その後1ヶ月程時間を置いて論文本試験の選択科目の受験を行い、その後口述試験を行います。
短答式試験の試験科目について
特許法・実用新案法とは、発明や物の形状等の考案の保護を図る一方、その発明等を公開し、技術の進歩を促進し、産業の発達に寄与しようという法律のことです。
意匠法とは、物品のより美しい外観、使ってより心地のよい外観を探求し、美感の面から創作を保護しようという法律です。
商標法とは、商標に対し、それが付された商品等の出所を表示する機能等を持たせることにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、産業の発達に寄与し、一方で需要者の利益を保護しようという法律です。
条約とは、パリ条約、特許協力条約、TRIPS協定、マドリッド協定の議定書、ハーグ協定のジュネーブ改正協定等、産業財産権に関連する国際条約のことです。
著作権法は文芸、学術、美術、音楽等精神的作品を保護するものであり、不正競争防止法は、商品形態の模倣行為やノウハウ等の盗用を不正競争行為として規制する法律です。
※短答式筆記試験に合格した方は、短答式筆記試験の合格発表の日から2年間、同試験が免除されます。
論文本試験(必須科目)について
上記の法令についてのうち、特許法・実用新案法、意匠法、商標法についての論文の試験です。
※論文式筆記試験(必須科目)に合格した方は、論文式筆記試験の合格発表の日から2年間、同試験が免除されます
論文本試験(選択科目)について
1科目を選択して受験理工I(機械・応用力学・・・・・・材料力学、流体力学、熱力学、土質工学
理工II(数学・物理)・・・・・・基礎物理学、電磁気学、回路理論
理工III(化学)・・・・・・物理化学、有機化学、無機化学
理工IV(生物)・・・・・・生物学一般、生物化学
理工V(情報)・・・・・・情報理論、計算機工学
法律・・・・・・民法
※平成20年度以降の論文式筆記試験選択科目に合格した方は、永久に同試験が免除されます。
また、選択科目についての受験を免除できる資格があります。
司法書士、行政書士、一級建築士、第一種、二種電気主任技術者免状、薬剤師など、試験科目と同等の内容を扱うの資格を取得している場合には、選択科目は免除となることがあります。
弁理士に合格するための学校選び
弁理士試験は難易度の高い試験です。試験範囲が広く、論文試験もあるため、受かるためのテクニックに関する知識が重要となります。
また、短答式、論文式必須のどちらについても、免除期間は2年間と限られているため、長く受からずにいると再び短答式から受け直すことになってしまいます。
そのため、勉強の高率を上げるために予備校に通う、または予備校の通信授業を受けて、1年目で短答式に受かり、2年目で論文と口述に合格するというプランを立てる人が多い試験です。
予備校の中では、LECが合格率が高くなっています。通信講座を選べば、8万円程度から、高くて50万円程度の講座が開設されています。
初学者向けの講義の予備校比較
学校名 | LEC | 資格スクエア | TAC |
特徴 | 合格率が高いと評判があります。 | テキストの評判が良い学校です。 価格も安めに設定されています。 | 定評のある資格の学校です。 |
金額 | 通学・通信:45~55万円程度 | 通信:25万円前後
| 通学・通信:40万円前後
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資料請求 |
近くに学校があるかどうかや、講師との相性が大切になりますので、なるべく多くの学校を見学・授業を体験してから学校を選びましょう。
テキストを見比べてみて学校を選ぶのも良いでしょう。
通学講座やWEB通信の良いところは、最短合格のためのノウハウがしっかりと掴めるところです。
学生などで大学生協が使える場合には、学費が減額されるシステムがある可能性が高いですので、そうした大学のシステムも活用しましょう。
一般教育給付金、特定一般給付金を利用することで、ハローワークから学習の支援手当を受けられる場合があります。対象の講座に当てはまる場合には、申請を行い学費負担を減らしましょう。
独学で弁理士を目指す人も少ないながらいる
試験の内容を理解し、短期間で合格を目指す場合には、通信などを利用して予備校へ通うのをおすすめします。
ただ、弁理士の資格を独学で目指す人がいない訳ではありません。最低限必要と言われるテキストを集めて、過去問と比べながら自分が独学でできるかどうかを考えてから、どのように試験対策をするのかを考えると良いと思います。
下記のテキストは、弁理士を受験する人の多くが最低でも購入うする法文集や判例集です。これに合わせて、過去問集なども必要となります。
短答式・論文式試験の合格率について
短答式試験合格基準については、以下のように定められています
総合得点の満点に対して65%の得点を基準として、論文式筆記試験及び口述試験を適正に行う視点から工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であること。ただし、科目別の合格基準を下回る科目が一つもないこと。なお、科目別合格基準は各科目の満点の40%を原則とする。
論文本試験の合格基準は、以下のように定められています
標準偏差による調整後の各科目の得点の平均(配点比率を勘案して計算)が、54点を基準として口述試験を適正に行う視点から工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であること。ただし、47点未満の得点の科目が一つもないこと。
科目試験については、科目の得点(素点)が満点の60%以上の場合に合格となります。
口述試験の合格率は95%前後であり、ほとんどの人が合格する傾向にあります。
受験者数に対する、全体の合格率は5~10%程度です。
弁理士の資格への求人と年収の目安
弁理士の資格を取得しようと考える人の中には、既に知財関係の仕事をしている人もいます。企業で弁理士として活躍する場合には、年収は500万円から、年齢とともに高額になり、最終的には1,000万円程度年収がある弁理士もいます。
独立した場合には、経営者としての能力が問われますので、年収にはばらつきがありますが、2,000万円以上の年収を達成する人もいます。
弁理士は、特許技術に関する情報を扱い、申請を代行できる貴重な人材として企業でも重宝されます。常に求人のある資格の1つと言えるでしょう。
知財関係の職種に先に就職するには
知的財産管理技能検定2級の資格を取得していると、知財関係の部署に就職しやすくなります。そのため、知的財産管理技能検定を取得して、知財関連の会社に就職してから弁理士を目指す人もいます。
また、特許技術を扱う製造関係の企業が中小企業であることが多いため、中小企業診断士の資格との相性も良く、中小企業のコンサルタントとして働くという方法もあります。
他にも、語学力を高めて国際的に特許の仕事をする方法もあります。
発明や新しいアイデア、著作権などに興味のある方、大学の学部が理系だった場合で、知識を生かして仕事をしたい場合などは、弁理士の資格を大いに活用できると思います。