社会に出ると単純接触効果の数が圧倒的に少なくなる
心理学に「単純接触効果」という法則があります。
簡単に説明すると、接する機会が多いほど、人は相手に好感を抱きやすくなるということです。
学生時代が終わってみると、いかに学生という環境は恋愛をしやすい環境だったのだと感じる人は多いのではないでしょうか。
それは、出会いの機会が多かったことに加えて、数百人もの男女が同じ場所で繰り返し接触することで、相手への親近感を覚えやすかったことが要因です。
しかし、社会人になると、出会いの場は限られ、出会う数も制限されてしまいます。
広い世界に出たにも関わらず、出会いは少なくなるのです。
それこそが、単純接触効果の場と数が減っていることが原因です。
同じ会社の人間や、近所の人だけでは、出会いの数はとても少なく、会社や近所の人のほとんどが既婚者であったり、恋愛対象には入らなかったりする場合もあります。
また、フリーランスで働いている場合には、繰り返し出会う人がまったくいないというケースもあるのです。
単純接触効果が起こりにくい社会の場では、結局、身近にいる限られた人と恋愛関係に発展することが自然と多くなります。
すると、どういうことが起こるかというと、一人の人を数人で取り合う状況や、既婚者と関係を持ってしまうという状況が起こりやすくなるのです。
また、既に交際している相手がいる場合にも、相手に重大な欠点を見つけた場合や、相手との相性が悪いと感じている場合でさえ、この人と別れたら出会いがないのではないかと考えてしまい、そのまま交際を続けてしまうということも増えていきます。
人が自然な出会いを求めるのは安心感があるから
単純接触効果により親近感を覚えた相手に恋をすることが、ごく自然な出会いによる恋だと認識されているのが今の社会ですが、どうして自然な出会いを人は求めるのでしょうか。
繰り返し出会える環境にあるということは、相手のことを知る機会が多くなるということ、信頼関係を築きやすくなるということです。また、恋愛を目的とした出会いではなく、人としての評価が先にあることから、恋愛をする際のバイアスがかかっていない状態を知っている安心感もあります。
一方で、婚活やお見合いといった場では、恋愛から入ること、もしくは恋愛も省いて結婚を目的として男女が出会うため、それ以外の場での相手の性格や習慣を知る機会がありません。
信頼できるかどうかを、第三者の判断や、書面上の記載事項に頼ることになり、信用できないケースが一定数存在するため、知らないことへの恐怖を抱えての出会いになります。
例え自然な出会いで築き上げた恋愛関係でも、ふとしたことで崩れてしまうこともあるように、信頼関係というのは案外もろいものですので、恋愛結婚とお見合い結婚のどちらが良いとは一概には言えません。
真面目だと信じていた人に裏切られることもあれば、長い付き合いでも知らないことがあったということも起こり得るのが人間関係です。
そう考えると、相手のことをよく知らないで始まる恋愛と、知っているつもりで始まる恋愛に、実はそう大きな差はないことが見えてきます。
自然な出会いと、そうでない出会いにどんな差があるのかというと、それは、相手を知っているという思い込みだけでもあるのです。
もちろん、職場や学校、趣味の場での出会いであれば、相手の本心が見えやすいという利点がありますし、相手が失敗をした時にどんな反応をするか、また、気遣いのできる相手かどうか、そうしたことも予め知ることができ、その時点で自分にとっての恋愛対象かどうかを判断することができます。
その点、全く知らない相手というのは、社会的信用があるかという時点から疑わなければならず、相手の身上調査をしてみてはじめて、隠されてきたヤバイ過去を知ってしまうということもないとは言えません。さらに、知らないことの恐怖は強く相手への疑いを持たせるので、どうしても単純接触効果により安心感を得ている人の方が良い人間のように思えてしまうのです。
ただ、共有時間のわずかな差で、自然な出会いと、そうでない出会いの間に大きな壁を築いてしまうことは、数ある出会いと可能性を無くしていることにもなります。
不毛な恋愛をしてしまう理由こそが単純接触効果のワナ
不倫やくされ縁での恋愛関係を続けてしまい後悔している人もいると思いますが、この多くが単純接触効果による安心感によるものです。
結婚はゴールではないので、恋愛関係の形は自由です。しかし、本人は望んでいないにもかかわらず、不倫をしてしまったり、別れたいのに別れられない関係を続けてしまうのは、これ以上の出会いがあるか分からないという漠然とした不安と、長く一緒にいることで築かれた安心感による所が大きくなります。
不倫関係にある場合、場合によっては相手の配偶者から訴えられることもあります。そうしたリスクを取ってまで、不倫関係を続ける理由が、本当に好きな相手だからということは、実は少ないのではないでしょうか。
また、相手が身近な人間でないにも関わらず、不倫関係にあるということはかなり珍しい事です。
ほとんどの場合、上司や部下、同僚、近隣の人間など、近い関係にあり、単純接触効果の高い人間関係において、不倫が生まれます。
あなたが理想とするタイプの人間がこの世界のどこかに居たとしても、それがデータ上であったり、接触する機会のほとんどない人間であったりする場合、恋愛に発展することは難しくなります。
知らない人間のことより、知っている人間に親近感を覚えるのが人間だからです。
しかし、世界中の人間と恋愛できる可能性があるにもかかわらず、小さな世界から抜け出すことができないのが、私たちが持っている心理的な問題に原因があるのだとすれば、心理的なバリアを取り除くことでもっと自由に出会い、恋愛をすることができるようになるはずです。
単純接触効果を後天的に利用する方法がある
よく知らない相手であっても、何度も出会い、様々な場を共有することで相手を理解できるようになるのだとすれば、出会いはどんな形でも良いはずです。
婚活パーティーでも、アプリでも、お見合いでも合コンでも、出会えた人ともう少し一緒に過ごしたいと感じたら、積極的に会う機会を設けてみることが大切です。
その場合、より相手の自然な状態を知りたいのであれば、何かの活動を一緒にしてみると相手のことが理解し易くなります。
趣味の活動やイベントへの参加、ボランティアを一緒にしてみる事で、相手の普段のあり方が見えてきます。なるべく、色々な種類の事を一緒にやってみることで、相手を理解することができるようになるのです。
そして、恋人同士になった場合には、生活環境の中で出会った友人をお互いに紹介し合うことで、相手への信頼を高めることができます。
しかし、お互いに、本音を伝え合うのが難しいのが、もともと良く知らない相手との出会いから発展した恋でぶつかる壁です。
知らない相手の場合、良く思われたいからと必要以上に良い人間を演じてしまう場合や、反対に、知らない相手に身構えてしまい、いつも以上に無口になってしまったり、言葉がきつくなってしまったり、上手く接することができない場合もあるでしょう。
しかし、いずれは本音で接するのが恋愛関係にある相手です。本音を隠すことは、単に相手との関係性を築くのが長引くだけです。相手を知らないからこそ、本当の自分で接していくことが大切になります。
ここで勘違いをしてはいけないのは、本当の自分=乱暴な自分ではないことです。
親しき仲にも礼儀ありの通り、家族であっても、恋人であっても、思いやりと優しさは人間関係を良好に築くために大切なことです。ここで言う自分を見せるというのは、自分を過大に見せたり、やりたくないことまで無理してやる必要はないということです。
打ち解けやすい環境を増やしていくことが大切になる
出会いの方法への障壁がなくなり、出会いの数が増えたとしても、何人もの人と本音で接して、パートナーを探すというのは本当に大変なことです。
自然な出会いを求める理由の中に、恋愛を目的とした出会い費やすエネルギーが、自然な出会いの場合には必要ないということもあります。
今は、大人にこそ学校が必要な社会です。
校舎のような建物があり、定期的に必要な用事で場所があり、様々な活動を行うことができる場があると、そこでは人々が相談をしたり活動をしたりすることができます。
そこにさらに、損得勘定のない遊びの場があると、人間関係が深まります。
サークル活動や趣味の集いを自治体毎に一つの大きな建物の中で行うなどの工夫により、既婚や未婚を問わず、人々が集う場所を設け、そこに一定のモラルや倫理を求めることで、良質な出会いの場が形成されるのではないかと思います。
未来には、そうした出会いの場ができることを期待しつつ、今できることは何かと言えば、やはり、どんな形でも出会いを大切にするということです。
恋愛を目的とした出会いには、お互いのことを恋愛対象として見た時に、〝あり〟か〝なし〟か、を判断しても構わないという前提があります。これは大きな利点です。
出会った者同士が早い段階で正直に自分の趣味嗜好の譲れない点を打ち明けることができれば、いつかは互いに惹かれ会う者同士の出会いがあるかも知れません。
こうしなければ、ああしなければという強迫観念を捨てて、今日こそ素敵な人と出会えるかも知れないと期待しながら、新しい出会いの場へ出かけることができると良いですね。